日本語教育能力検定試験(令和元年/2019年度) )【解答・解説】試験問題Ⅰ [問題1] [問題2]
日本語教育能力検定試験(令和元年/2019年度) 試験問題Ⅰ [問題1] [問題2]
の解答・解説です。参考にしていただければ幸いです。
[問題1]
(1)【円唇性】
- [a] → 母音の「ア」非円唇低母音
- [i] → 母音の「イ」非円唇前舌高母音
- [ɯ] → 母音の「ウ」非円唇後舌高母音
- [e] → 母音の「エ」非円唇前舌中母音
- [o] → 母音の「オ」円唇後舌中母音
[o]だけが円唇で、他の[a][i][ɯ][e]は非円唇である。
(2)【撥音の音声】
- 干拓 → 舌を上の歯茎に強く当てる。
「ん」の後続音は「た」であるため、「ん」は有声歯茎鼻音で発音される。 - 貫通 → 舌を上の歯茎に強く当てる。→ 舌を上の歯茎に強く当てる。
「ん」の後続音は「つ」であるため、「ん」は有声歯茎鼻音で発音される。 - 完治 → 舌を上の歯茎に強く当てない。
「ん」の後続音は「ち」であるため、「ん」は有声歯茎硬口蓋鼻音で発音される。 - 関東 → 舌を上の歯茎に強く当てる。
「ん」の後続音は「と」であるため、「ん」は有声歯茎鼻音で発音される。 - 官邸 → 舌を上の歯茎に強く当てる。
「ん」の後続音は「て」であるため、「ん」は有声歯茎鼻音で発音される。
撥音の「完治(かんち)」だけが[n-ch]、つまり舌を[ch]の位置に置いて鼻音を出している。他の「干拓」「貫通」「関東」「官邸」は[n-t]や[n-ts]なので舌はtの位置にある。
(3)【拍数の変化】
- 「月火水」を読み上げるときの「火」 → 1拍(本来)
- 「月水金」を読み上げるときの「月」 → 2拍
- 「火水木」を読み上げるときの「水」 → 2拍
- 「火木土」を読み上げるときの「木」 → 2拍
- 「金土日」を読み上げるときの「金」 → 2拍
「月火水」の「火」は読み上げる際、「ka」から「kaa」と2拍に変化する。
(4)【読み方のバリエーション】
- 9歳 → きゅうさい → 1から10まで「さい」
- 9人 → きゅうにん / くにん → 1から2まで「り」3から10まで「にん」
- 9個 → きゅうこ → 1から10まで「こ」
- 9本 → きゅうほん → 1から10まで「ほん」
- 9回 → きゅうかい → 1から10まで「かい」
(5)【語構成】
- 耳当て → 助詞「に」の省略
- 下敷き → 助詞「に」の省略
- 台拭き → 助詞「を」の省略
- 膝掛け → 助詞「に」の省略
- 前書き → 助詞「に」の省略
(6)【転成名詞の意味】
- かばん持ち → 持つ人のこと
- 所帯持ち → 持つ人のこと
- 金持ち → 持つ人のこと
- 心持ち → 「持ち」は「あり方」のこと
- 力持ち → 持つ人のこと
(7)【デ格の意味】
- はしかで休む。→ 理由
- メールで送る。 → 手段
- 日本語で話す。 → 手段
- 遠近法で描く。 → 手段
- 新幹線で行く。 → 手段
(8)【補助動詞】
- 試しにソファーに座ってみる。 → 「みる」は試すの意味で使われている
後部要素「みる」は本来の意味を失っているので、統語的複合動詞 - ゴミを家に持ってかえる。 → 「かえる」は本来の意味で使われている
後部要素「かえる」は本来の意味を保持しているので、語彙的複合動詞 - 花がきれいに飾ってある。 → 「ある」は結果の状態で使われている
後部要素「ある」は本来の意味を失っているので、統語的複合動詞 - 嫌なことはすぐ忘れてしまう。 → 「しまう」は完了の意味で使われている
後部要素「しまう」は本来の意味を失っているので、統語的複合動詞 - 解決の糸口が見えてくる。 → 「くる」はだんだんとそうなるの意味で使われている
後部要素「くる」は本来の意味を失っているので、統語的複合動詞
語彙的複合動詞:持ってかえる、話はじめる、取り出すのように、複合動詞の後部要素の動詞が結合後も本来の語彙的な意味を担っている語。
補助動詞:読み切る、話し込む、複合動詞の後部要素の動詞が結合後に本来の意味を失い、文法的な機能を担うようになった語。統語的複合動詞はとも呼ばれる。
(9)【指定文と措定文】
- 私の先生は男の人だ。 → 措定文
- 山田さんは医師だ。 → 措定文
- あの人は冷淡だ。 → 措定文
- 議長は有能だ。 → 措定文
- 院長はあの人だ。→ 指定文
指定文:
・Aさんはあの人だ=あの人がAさんだ○
・「~はどの人(どれ)ですか」に対する答えで、「AはBだ」の形は「BがAだ」に置き換えられる。
措定文:
・Aさんは人間だ = 人間がAさんだ×
・「~はなんですか」に対する答えで、「AはBだ」の形は「BがAだ」に置き換えられない。
(10)【直接受身文における動作主の表示形式】
- 生み出された
- 建てられた
- 作られた
- 見られた →「○○によって」が使えない
- 描かれた
(11)【述語が表す出来事とニ格の関係】
- 週末に映画館へ行った。
- 週末にドライブをした。
- 週末に一人で残業した。
- 週末にケーキを買ってきた。
- 週末にレストランを予約した。 →予約という行為をしたのは週末とは限らない
(12)【「の」の用法】
- あなたの決心を確認する
- 本の好きな子ども →「の」を「が」に置き換えられる
- バッグの値段が高い
- 彼の高慢な性格
- 親しい友人の娘
「の」には、「あなたの決心」「友人の娘」など名詞と名詞の関係性を表すものと、「お茶が飲みたくなる時間→お茶の飲みたくなる時間」のように、「が」の代わりに名詞修飾節の主語(対象語)を示す用法がある。
(13)【のだ(んだ)」の用法】
- あれ、雨が降っているんだ。 →相手に発見したことを確認している
- なんだ、このレバーを引けばいいんだ。 →相手に発見したことを確認している
- よし、僕は今日から生まれ変わるんだ。 →自分に対して言い聞かせている【意思】
- へえ、こんな本があるんだ。 →相手に発見したことを確認している
- そうか、山田さんはあのチームなんだ。 →相手に発見したことを確認している
(14)【ところ」の用法】
- いまさら彼が来たところで状況は変わらない。→ 「~としても」
- 質問したいと思っているところに先生が来た。→ 「~とき」
- 仕事が一段落するところで休憩を取ろう。→ 「~とき」
- 食事が終わったところで財布がないことに気づいた。 → 「~とき」
- リラックスしていたところに突然電話がかかってきた。 → 「~とき」
1以外は「とき」で言い換え可能。
(15)【「れる・られる」の用法】
- 昔の友人がしのばれる。 →自発
- 新薬の開発が望まれる。 →自発
- 経済の悪化が案じられる。 →自発
- 学生の意欲が高められる。 →可能
- 彼の将来が思いやられる。 →自発
自発の「れる・られる」:「学生時代が思い出される」のように、人の心の作用に関する動詞に自発を表わす助動詞(れる、られる)をつけて「自然とそうなる」という意味を表わすことができる。
(例)思い出す→思い出される(自発) 思い出せる(可能) 思い出させる(使役)
[問題2]
(1)【「「ショート」のつもりが「しようと」と聞こえる。】
- 「10時間」のつもりが「自由時間」と聞こえる。 じゅう → じゆう
- 「天井」のつもりが「展示用」と聞こえる。じょう → じよう
- 「居室」のつもりが「教室」と聞こえる。 →短音を長音に聞き違える
きょしつ → きょうしつ - 「客」のつもりが「規約」と聞こえる。 きゃく → きやく
3は短音を長音に聞き違えたもので、他は、1拍で発音される拗音を小文字を1拍で読む誤り。
(2)【「何頭ですか?」のつもりが「南東ですか?」と聞こえる。】
- 「今日行くの?」のつもりが「教育の?」と聞こえる。 →アクセントの聞き違い
- 「咲かなかった?」のつもりが「魚買った?」と聞こえる。 →アクセントの聞き違い
- 「殻だからね。」のつもりが「体からね。」と聞こえる。 →アクセントの聞き違い
- 「旅行です。」のつもりが「涼子です。」と聞こえる。 →これは同音異アクセントの違いではなく、「りょこう」と「りょうこ」、「う」の位置が異なりますから同音ではなく、読みが違います。
(3)【私はその映画に深く感動された。】
- その都市は長年の開発で次第に発展された。→能動態(した)を受動態(された)にした誤用
- バブル崩壊で株価が一気に下落された。 →能動態(した)を受動態(された)にした誤用
- 私はたくさん誤りが彼女に指摘された。 →助詞「誤りが」の「が」ではなく「を」を使わなければならない=助詞の誤用
- 彼女の言葉に私は随分安心された。 →能動態(した)を受動態(された)にした誤用
(4)【その商品は高かったです。そこで、私には買えません。】
- あそこに大きなマンションが見えます。そこで、私は住んでいます。 →「そこで」を場所としてとらえている。正しくは「そこに」
- もう何日も眠れない夜が続いています。そこで、体調が優れません。→「だから」の意味で使っている
- 仲のいい友達とけんかしてしまいました。そこで、本当に悲しいです。 →「だから」の意味で使っている
- 化学の先生の話はとても面白いです。そこで、化学が好きになりました。 →「だから」の意味で使っている
例題は「だから」や「それゆえ」を使うべき因果関係を「そこで」といってしまう誤り。
(5)【そのお皿は後で片づけますから、まだテーブルに置いてください。】
- 危険ですから、 その部屋の窓は決して開けずに、 閉めておいてください。 →「おいて」の欠落
- 彼にはお世話になったんだから、 その恩はずっと覚えておかなきゃいけないな。 →「おいて」の欠落
- すぐ帰ってくるつもりだったから、 外出時も部屋の電気は消さずに点けておいた。→ 「おいて」の欠落
- 1本しかない傘をなくしたから、 梅雨に入るまでに新しいのを買おう→まで×→までに○
放置を表す「おいて」の欠落の問題です。正しくは、「テ形+おいて+ください」で言わなければならない誤り。4だけ助詞の誤り。